「好きなものを自分の手でつくりたい」という思いが導いた、新たな選択
学生時代から、手を動かしてものをつくることが好きでした。趣味のバイクでは、アマチュアレースに向けてエンジンを分解し、より速く走れるよう改造を重ねていました。試行錯誤の末、工夫が結果につながる瞬間に、ものづくりの面白さを感じていたのです。
子どもの頃から親しんできた釣りも、大切な趣味のひとつです。釣り好きの父が所有する船で小学生の頃から毎週のように仙台湾へ出かけ、ワラサやタイなどを釣っていました。高専時代には遊漁船に乗るようになり、マグロ釣りに夢中に。その頃から愛用してきたのが、大型魚を狙う釣りに最適な「DAIWA(ダイワ)」のリール、「SALTIGA(ソルティガ)」シリーズでした。
高等専門学校卒業後は、好きなバイクに関わるものづくりを志し、二輪車も手がける自動車メーカーに入社しました。約3年間、自動車の内装部品の設計や取引先との調整を経験する中で、より広い工程に携わり、自分の手で試行錯誤できるものづくりがしたいという思いが強くなりました。
「どうせなら、心から好きな製品をつくりたい」。そう考えたとき、真っ先に浮かんだのが、長年愛用してきた「SALTIGA」とグローブライドでした。転職活動で応募したのはグローブライド一社だけ。選考を通過したときは、大好きな釣りに、ものづくりの立場から関われることが本当に嬉しかったです。
経験を積んだ先に待っていた、憧れの「SALTIGA」開発
現在はリール製品開発部に所属し、釣り糸を巻き取る道具であるリールの設計を担当しています。前職で設計していた自動車は何万点もの部品で構成され、一人の設計者が関わるのはその一部です。一方、リールの部品は約200点。釣り糸を巻いておく円筒状の部品や、それを回転させる本体の構造まで、製品全体を見渡しながら一つ一つの部品の設計に携わることができます。「この製品を自分がつくった」と実感できることは、まさに転職時に求めていたものづくりの理想でした。
入社後約1年間は、既存機種のサイズ違いなどを担当しながら、リール開発の流れを学びました。その後、任されたのが「SALTIGA 30000」の開発です。この製品は、クロマグロなどの超大型魚を釣るために、大量の太い釣り糸を巻けるよう開発された「DAIWA」初の大型サイズでした。高校時代からマグロ釣りに慣れ親しみ、「SALTIGA」に憧れてきた私にとって、この製品を任されたことは、長年の憧れが仕事として形になった、忘れられない出来事です。
開発中は、高校時代から憧れていたマグロ釣りの第一人者と、実際に海へ出て試作品を試す機会にも恵まれました。狙い通りの性能が出ているかを確かめ、改善点についてフィードバックをいただきながら完成度を高めていきました。発売後、SNSなどを通じて、自分が設計したリールが実際に使われている様子を目にしたとき、「好きな製品を自分の手でつくる」という夢が形になったことを改めて実感しました。


何百回ものテストを重ね、狙い通りの飛距離へ
もちろん、憧れの「SALTIGA」開発は、すべてが順風満帆に進んだわけではありません。「SALTIGA 30000」が形になるまでの2年半弱は、まさにトライアンドエラーの連続でした。特に難しかったのは、太く長い釣り糸を十分に巻ける容量を確保しながら、ルアーを遠くへ投げるための飛距離も実現することです。
糸を巻く部品を大きくすれば容量は増えますが、その分、放出された糸が釣り竿に当たりやすくなり、飛距離が落ちてしまいます。そこで、何度も設計を見直し、試作品をつくって検証を重ねました。
飛距離のテストは、機械ではなく人の手で投げて行います。リールだけで約1キロ、竿と合わせると約2キロになるため、一日中投げ続けるのは体力的にも厳しい試験です。風の影響を受けにくい施設で、現行品や比較対象となる製品、試作品を同じ条件で何百回も投げ比べ、わずかな違いを確認しながら次の設計へ反映しました。
思うような結果が出なければ、試作品を持ち帰って設計を修正し、再びテストへ。炎天下の中、同じ場所へ3度足を運んだこともありました。ようやく狙い通りの飛距離が出たときは、苦労を重ねた分、達成感もひときわ大きかったです。仮説を立て、試し、改善する。そうしたトライアンドエラーを積み重ねながら答えへ近づいていく過程に、ものづくりの醍醐味を感じました。
チームに支えられ、仕事にも家庭にも真剣に向き合う
リール開発は、一人だけで完結する仕事ではありません。設計を進める中では、上司や同僚に相談しながら検証を重ね、試作やテストの結果をもとに改善を繰り返していきます。自分の担当範囲に責任を持ちながらも、チームで知恵を出し合い、より良い製品を目指していく。その関係性があるからこそ、難しい開発にも前向きに向き合えるのだと思います。
そうした支え合いのありがたさを特に実感したのが、2人目の子どもが生まれたときでした。当時は、担当機種の試作がピークを迎えていたタイミングでしたが、上司や同僚と相談しながら事前に必要な準備を進め、支えを受け、約1カ月間の育児休業を取得しました。休業中もチームのメンバーが業務をフォローしてくれたため、安心して家族との時間に向き合うことができました。
育児休業に限らず、子どもの急な発熱や家族の体調不良があった際にも、周囲と相談しながら業務を調整しています。普段からチームで協力し合う関係が築かれているからこそ、仕事にも家庭にも真剣に向き合えるのだと感じています。
今後は、目の前の課題だけでなく、ひとつの設計変更が製品全体に及ぼす影響まで見通せる技術者を目指しています。リール開発では、現象の原因を突き詰め、広い視野で検証することが欠かせません。
グローブライドのものづくりに必要なのは、釣りへの興味だけではありません。「なぜそうなるのか」を考え、仮説を立て、検証し、改善を重ねる姿勢が大切です。トライアンドエラーを楽しみながら、より良い製品をともにつくれる仲間と一緒に働きたいです。
ある一日の流れ
社内で過ごす日
08:30~09:00 | メールチェック
09:00~11:00 | 設計
11:00~12:00 | 資料作成
13:00~15:00 | 試験
15:00~16:00 | ミーティング
16:00~17:30 | 図面作成
フィールドテストで過ごす日
06:30~15:30 | フィールドテスト